プロから教わった美味しい「牡蠣フライ」の作り方


今年もいよいよ寒くなってきました。
広島生まれの私は、毎年このぐらい寒くなると、「そろそろ牡蠣の季節だな」と思い始めます。
今年も既に、故郷の牡蠣養殖業者に発注しました。
週末は、この冬最初の牡蠣を頂きます。

牡蠣好きにとっては、それぞれ好みの食べ方があるでしょうが、今回は「プロから教わった牡蠣フライの作り方」を紹介させていただきます。
もちろん、我が家もこの方法で調理しています。

ご紹介する前に、かつて経験したことを一つだけ書かせていただきます。
それは、隅田川の近くに店を構える洋食屋さんでのことです。
もう随分前のことですが、この店で「牡蠣フライ」を食べた時、美味しかったこともありますが、私が忘れもしない牡蠣の味だったので、思わず店主に「親父さん、この牡蠣は的矢の佐藤さんの牡蠣ですよね」と話しかけてしまったことがあります。
「お客さん、やはり分かりますか。その通りですよ。やはりここの牡蠣は素晴らしいですね」、というやり取りがありました。
そして後日、この店で素敵なことがありました。
知り合いの業務用の調理道具メーカーの社長と一緒に、またこの洋食屋さんに行った時のことです。
その春に高校を卒業して、このメーカーに就職した若い女性社員二人が一緒でした。
その一人が「牡蠣フライ」と聞いて、「すみません、私、牡蠣フライは好きじゃないんです」と返事しました。
本当に食べられない人に無理強いしちゃいけませんが、好きじゃないというなら可能性があると思い、思わず「お嬢さん、全く食べられないなら無理は言いませんが、ほんのちょっとチャレンジしてみませんか? それでダメならやめればいいのですから」と、おせっかいをしてしまいました。
恰幅のいい店の主も、「そうですよ、口に入れて合わなかったら止めればいいから、ちょっとだけ試してみたら?」と話しかけてくれました。

まだ18歳の女性新入社員は、社長の前ですからきっと無理したのかもしれませんが、「ちょっとチャレンジしてみます」と言って、ちょっとかじりました。
ところが、ほんの一瞬後には、一個丸ごと食べていました。
「これが牡蠣フライなんですか、本当に美味しい!」と言って、結局10個ほどの牡蠣フライを平らげてしまいました。18歳の女性社員が、それまで知らなかった最高の味に出会った瞬間に立ち会ってしまったのです。
無理強いしてはいけないと思いつつ、勧めるのはまずいかなという気持ちもあったので、嬉しさ半分、ホッとしたのが半分でしたが、一人の女性が一皮むけた瞬間です。はっきり言って、かなり感動したことを今でも覚えています。
同時に、「本当に美味しい食べ物の力」を思い知らされた瞬間でもありました。

さて、前置きはこれくらいにして、「美味しい牡蠣フライ」に移ります。
どんな料理の場合でも同じですが、まずは「良い食材」を選ぶ事、これで大勢は決まってしまいます。
牡蠣は、海から引き上げてから、傷みの進みが早い食材です。
良い海で育った良い牡蠣を、海から上げて、どれだけ短時間で口に入れるかが、最も重要なポイントです。
良い牡蠣に言葉はいりません。
牡蠣は、海から貰った栄養、滋養の塊です。本当に美味しい。
しかも、育った海によって、味の特徴が異なるのです。
広島の牡蠣、岡山の牡蠣、伊勢の牡蠣、松島の牡蠣、新潟の岩垣、北海道厚岸の牡蠣、それぞれ特徴のある味と甘さ、冬は牡蠣好きには嬉しい季節です。
「生牡蠣」「焼き牡蠣」「蒸し牡蠣」「牡蠣のオイル漬け」「牡蠣ご飯」、どれも美味しいですが、極め付きは「牡蠣フライ」でしょうか。
私が洋食屋さんのオーナー料理人から教わった「美味しい牡蠣フライの作り方」を説明します。

美味しい新鮮な牡蠣を購入して下さい。
今では、牡蠣の養殖業者もホームページを開いているので、産地から直接購入することが出来ます。
「牡蠣フライ用」と言って注文すればいいと思います。

(1)牡蠣の下ごしらえ
ポイントは一つです。
何度も水で、丁寧に綺麗に洗ってしまう方が多いようですが、これは厳禁です。
牡蠣の旨みと栄養分を、どんどん捨ててしまってはいけません。
新鮮な牡蠣は、ザルに移すだけで、水分を拭き取ることはしないようにしましょう。
但し、すでに牡蠣の表面に「ぬめり」がある場合は、大根おろしで「ぬめり」を取り除きましょう。

(2)小麦粉のまぶし方
牡蠣に小麦粉をまぶしますが、ここでの注意ポイントは、小麦粉ははたかない。
小麦粉は、タップリ、隙間なくまぶす必要があります。
理由は、二つあります。
一つ目は、「旨みを閉じ込めるため」です。
二つ目は、こうすると牡蠣の水分が漏れ出ないので、揚げた時に「パチパチと油がはじける」ことが無くなります。揚げ物調理が怖い原因は、油が水をはじくことですから、はじけないのは助かります。

(3)使用するパン粉
小麦粉をまぶしたら、溶いた卵で完全にくるんで、次にパン粉をまぶします。
この時、牡蠣に万遍なくパン粉をまぶすために、「生パン粉」を使って下さい。
「乾燥パン粉」を使う方が多いようですが、パン粉が固いと、びっしりと万遍なくまぶすには、硬い「乾燥パン粉」では難しくなります。柔らかい「生パン粉」だからこそ、隙間なくびっしりとまぶせることをお忘れなく。

(4)パン粉のまぶし方
たっぷりのパン粉の上に牡蠣を置いたら、上からパン粉をかけて押してしまう方が多いですが、これも厳禁です。
上から押すと、牡蠣は柔らかいので、厚みのある個所と薄っぺらな個所が出来てしまいます。
そうなると、火の通りが均一になりません。その結果、全体が美味しいという具合にはならないのです。
正しいパン粉のまぶし方は、牡蠣の上からたっぷりパン粉をかけて、パン粉ごと手ですくい、まるでクリームコロッケのような丸い形に仕上げるということです。

(5)油への投入方法
いよいよ牡蠣を油に入れますが、パン粉でくるまれた牡蠣全体を手でくるむように持って、形を崩さないように優しく油に滑り込ませます。はじっこを指でつかんで入れたりすると、その部分はパン粉が裂けてしまい、そこから旨みが逃げてしまいますし、水分も出ていってしまうので、油もはじけます。

(6)揚げ油の温度と揚げる時間
揚げ油の温度は175℃です。そして揚げる時間は2分強です。
多くの方は4分ぐらいの時間をかけているようですが、これでは完全に揚げ過ぎです。
2分強ですと、油から引き上げた時は、約8割程度「火が入った状態」ですが、余熱で芯まで熱が入っていきますので、食べる時に丁度“ふっくらジューシー”という状態になります。
この「余熱」ということを覚えておくと、加熱調理の腕はグーンと上がります。
実際、4分も揚げてしまうと、食べる時には熱が入り過ぎ、牡蠣の芯まで固まってしまい、とてもじゃありませんが「ふっくらジューシー」とはいきません。
牡蠣は「海のミルク」とも言われます。
クリーミーな甘さが牡蠣の命、やはり「ふっくらジューシー」が美味しいですね。

いかがですか?
きっと読んでいるだけで「美味しそう」といった気持ちになるのではないでしょうか。
家族全員が、「フハ!フハ!」しながら、揚げたての「衣はカリッと香ばしくて、中身はクリーム状のアツアツ牡蠣フライ」を食べるなんて、なかなかのものです。
ここに、白ワインがあれば、いう事なしですね。

美味しいハンバーグ


先日、偶然、「ハンバーグステーキのルーツを尋ねる」TV番組を見ました。
ドイツのハンブルグがルーツで、ハンブルグがドイツの代表的な貿易港だったことから、世界に広がったという説明でした。きっと昔の船乗りや、船の料理人たちが、様々な国に伝えたのでしょうね。
ということで、今回は「美味しいハンバーグ作り」です。

まず最初に、ハンバーグは、お肉の旨みを味わう肉料理のひとつだということをご理解して下さい。 
このことを知っているかどうか、これが大切なポイントです。
ハンバーグというと、お肉は挽肉、ということになりますが、お肉の旨みを味わうことを意識すると、ポイントは三つあります。

(1)ひとつ目は、お肉の食感です。
メインの牛肉は、食感も楽しみたいので、細かく挽過ぎてはいけません。
ハンバーグを口の中に入れた時に、お肉のツブツブをしっかり感じることができることが重要です。
従って、「メインとなる牛肉は粗く挽く」のが「コツ」です。
手間ひまをかけることが嫌いじゃないならば、お肉屋さんで「切り落とし」を買ってきて、包丁で叩くのが最高です。
この方法だと、自分好みの大きさのツブツブにできますし、いろいろと調整もできます。

(2)二つ目は「脂肪」です。
つまり、赤身だけの牛肉では美味しくないということです。
お肉は、加熱する時、実は脂肪が適度にある方が美味しくなります。
サラダ油で揚げたご家庭のコロッケと、お肉やさんがラードで揚げたコロッケでは、美味しさが全く違います。
白いままの脂肪には旨みは殆どありませんが、この脂肪に熱を加えると旨みがグンと出てくるのです。 
適度に「さし(脂肪)」が入った牛肉を使いましょう。

(3)三つめは、メインの牛肉をつなぐ「つなぎ」の豚肉の挽肉です。
これはつなぎですから、しっかり挽いた挽肉を買って下さい。
肝心の牛肉と豚肉の割合ですが、7対3が基本と覚えて下さい。
基本という意味は、好みによって多少比率を変えれば良いということです。

以上がお肉についてポイントです。
次は、味について説明します。
そもそもハンバーグは、あらかじめある程度まで味を付けて、ステーキとは違う美味しさを楽しむ料理ですので、前もって塩、胡椒、卵、刻んだたまねぎ(事前に炒める必要は全くありません、私の体験ではただ微塵にした生のタマネギの方がハンバーグの場合は美味しいと思います)、そしてつなぎにあらかじめ牛乳でふやかしたパン(ふちを取り除いた柔らかい白い箇所)を混ぜて練ります。
ここでも、重要なポイントが二つあります。

(1)混ぜて練る時にお肉が温まらないようにすることです。
なぜかと言いますと、温度が高くなるとお肉がくっつきにくくなるからです。
理想的な方法は、大きいボールに氷と水を入れ、その上に小さなボールを置き、ここでハンバーグの種を練るという方法ですが、実はこれはかなりやりにくい。
そこでお肉を事前に冷蔵庫で冷やしておく、これを練る直前に取り出し、他のものと混ぜて練る、このやり方をお勧めします。
(2)よくTVなどでもやっていますが、ねっとりとして表面が白くなるまで練ります。 
この時、せっかく粗く挽いた牛肉をつぶしたのでは意味がないので、牛肉をつぶさないように練って下さい。食感が全く違います。

さて、練りが終わったら、ひとつひとつ形を整える段階になります。
ハンバーグの中に空気が入らないようにしながら、形は丸でも楕円でも結構ですから、真ん中がへこむようにします。
両方の手に油を塗って、種を手に取り、両方の手の間を行き来させることで、中の空気が抜けます。
上手に焼くと、へこました中心が膨らんできます。

さて、いよいよ焼く段階に入ります。
ハンバーグの芯にしっかりと熱が入り、表面の焦げ色が黒くはならないことが「焼き方」のポイントです。
使用するフライパンは、熱量の大きい鉄のフライパン、セラミックのフライパンが向いています。
フライパンに油を引き、火加減は中火で温めます。
手をかざし、熱い!っと感じるようでは温度が高過ぎます。
結構温かいなと感じる程度がベストです。
ここへ種を入れ焼き始めますが、この時、「ジュッ!」という短い音がする場合は温度が高過ぎます。
「ジューッ」といった音、「ジュジュジュー」といった音がするのが適温です。
下の方がうっすらと色が変わってきたら、火をやや弱めます。
下から二分の一ぐらいまで色が変わったら、ひっくり返します。
火加減はそのまま、今度はフライパンに蓋をして下さい。
こうすると芯まで火が通りやすくなります。
やがて、へこんでいた中心がしっかりと盛り上がってきます。
これは肉汁がしっかりとたまってきているサインです。ここで火を止めます。
1~2分ほど、蓋をして、このままにしておきましょう。
フライパン全体の余熱で、さらにハンバーグ全体に均一に熱が行き渡ります。

これを、野菜の点けあわせと共に温かいお皿に盛り付け、お好みのソースを用意します。

ハンバーグというと、肉の臭みを取るため「ナツメグ」を入れるのが常道ですが、今回は、混ぜて練る時、ナツメグを入れない説明をいたしました。
これは、最近のお肉の味のクセが昔ほど強くないことが理由です。
そもそも香料は、味を良くするためにも使いますが、いやなクセを抑えるためにも使います。
最近の肉はそのようなクセが無かったり、弱くなっていますので、使う必要のない場合もあるということです。
それと今回は、タマネギを事前に炒めずにと書きました。タマネギを炒めるポイントは、十分に甘みを引き出すことにありますが、ハンバーグの場合は、焼く過程で出る甘みで十分だと思います。
何度も両方を試してみましたが、この方が合っていると思います。
もちろん、私は事前に炒めたタマネギを使ったハンバーグの方が好きだという方もおられると思います。これは好みの問題でもありますので、どうぞお好きな方をお選び下さい。

No.27 ホームページ紹介


リバーライトのホームページに、「ユーザーズボイス」という場所があります。
リバーライトのフライパンを、実際に日々使っていらっしゃる方々から寄せられた「声」を、掲載させていただいている場所です。
今日は、この「ユーザーズボイス」に寄稿して下さった「杉山アキ子」さんのホームページ「Akiko’s Kitchen」の紹介をさせていただきます。起きている間は、料理のメニューを考えていたら時間が過ぎるのを忘れるというほど料理好きの杉山さんは、勿論趣味の領域なんかとっくの昔に通り過ぎ、永年プロとして家庭料理に取り組んでいます。
かつては、料理好きが嵩じて、料理店まで開いて、ご自分の料理を、お客様に提供していたこともあります。
勿論、根っからの食いしん坊の私ですから、杉山さんの料理は何度も頂いております。
杉山さんの料理が美味しいのは当たり前。
若い頃は、アパレル会社のデザイナーだったこともあってか、器にもこだわりがあるし、料理と器の組み合わせには目を見張らされるし、器に盛られた料理も抜群に美しい。
しかも、どの料理を盛り付けた器の脇にも、必ず相性抜群のお酒やワインがあります。

人は誰でも、人生は一回しかありません。
しかも「今」は二度とない「貴重な時」でもあります。
たった一回人生の、二度とない「今という時」、そのことに気づくと、今「どの料理を」、「どの器に盛って」、「どこで」、「誰と」、「どのお酒と共に」、「どんな会話を楽しみながら」食べるかは、大切ですし貴重でもあります。
そうしたことまで考えながら、季節の旬の食材を大切に生かす料理に取り組む杉山さんから学ぶことは、実は深い意味合いがあるのだと、私は思っています。
その料理の向こうには、人の命をいつくしむ、大切にするために、食材の命を頂くという「優しくも厳しい」杉山さんの料理に向き合う姿勢が見えます。

このホームページ「Akiko’s Kitchen」は、実は本日アップしたばっかり、生まれたてのほやほやです。
これから徐々に、掲載されるブログの内容も充実してくるでしょう。
料理のヒントも、どんどん増えることでしょう。
私も楽しみにしていますが、私が最も杉山さんの姿勢で、感心し納得していることは、自然の恵みである食材に対する姿勢です。
杉山さんの、「人間も食材も、共に自然の中で生かされている」という謙虚な姿勢からは、多くの事を学ばされます。
真鶴半島の漁師が、豊かな海を守るために、半島の広葉樹林を大切にしてきたことを、かつてこのブログで書きましたが、これと同じことを感じるのです。
だから、優しくて、美味しくて、健康に良い料理になる。

こういう方がホームページ「Akiko’s KItchen」をアップし、多くの方々に向けて、惜しげもなく自分の考えを提供して下さる。
正直言って、嬉しいですね。

何でも「便利・簡単・楽」が優先する時代が、未だに続いていますが、日々の食事は人の命の源です。
そしてその「人の健康」は、生まれてから今日までの「食生活のあり方」で基本は決まってしまいます。
私たちの命と健康は、「便利・簡単・楽」な方法では、決して手に入れることは出来ません。
このことは、東日本大震災で、私たち日本人は痛いほど分かったはずです。

健康な精神は健康な肉体に宿る。
健康な肉体は、日々の正しい食事によって作られ、支えられる。
料理が美味しければ、人はこのことをきちんと実行できる。
私も、日々、杉山さんのホームページ「Akiko’s Kitchen」から、多くの事を学ばせていただこうと思っています。

皆さんも、是非ご覧ください。

No.26 フードマーケティング・セミナー


昨晩(12月6日)、都内の大学で開催された「フードマーケティングセミナー」に出席してきました。
私は長年にわたって、日本の一般家庭の「食事と健康」にたずさわってきましたので、どのような話が聞けるか、興味津々で出かけました。

事前に私の手元に郵送されてきた案内には、『食の業界の“旬な仕掛け人”をゲストにお迎えして開催する』とありましたので、もう出かけずにはいられません。
今回のゲストは、東京都羽村市の食品スーパー「福島屋」の福島徹会長です。
福島屋は、以前、私もお店を見に行って、大変感心させられたので、このブログにも書いたことがあります。
あのお店の会長の考えを聞くことが出来るのですから、家庭の食に向き合って仕事をしてきた私にとっては、大変貴重な時間になるだろうなと、期待するのが当然です。
仕事仲間二人と連れ立って行って参りました。

セミナーは、まさに期待通り、大納得でした。
福島会長は、実にたんたんと、肩ひじ張ることなく、自分達が行ってきたこと、行っていることを、余すところなくお話しされていました。
常日頃から、食のマーケティングは工業製品のマーケティングとは本質的に異なるものだと考え、主張している私ですが、それを実際に行っている福島会長ですから、話す口調は静かですが、話の中身は知的でパワーが溢れるものでした。
生産者と向き合う姿勢、顧客と向き合う姿勢、その真剣さには打たれるものがあります。

今までに何度も書いていますが、私達の身体は、生まれてから今日まで、どの様な食生活を送ってきたかで決まってしまいます。これからも、どの様な食生活を送るかで、これからの身体のあり様が決まって行きます。
これはごく当たり前のことですが、多くの方が気づいていないようです。
その一方で、日本中で多くの人が、「安全な食品」を供給して欲しいという声を挙げています。
その声に応えようと、一生懸命に、「安全な食料の生産」に取り組んでいる生産者がいます。
そんな今、輸入農産物など、安価な食料の問題も、いろいろと騒がれています。
TPPのことを心配している方も沢山います。
今後の家庭の食卓は大丈夫なのだろうか、と心配している方も沢山いらっしゃいます。

大事な基本なのでまた書きますが、「食」は、人間にとっては「生命の源」です。
しかも、例えば農業生産物は、大地、太陽、水という自然の力が無くては作れません。
つまり、「私たちが口にする食材は自然の恵み」です。
ここからが大切なのですが、「国産の安全な食料」が、常に安定して供給されるためには、実は生産者の力だけ、生産者の努力だけでは無理なのです。
この国では、人の命の源である食料まで、食料以外の「商品」と同じように論じられていますが、これは根本的に間違っています。
食料は「人の命の源」、つまり工場で大量に、しかも均一に生産される工業製品とは、全く異なる「商品」なのです。

食料の生産者にも生活がありますから、生産した食料が売れなければ話になりません。
つまり、国産の安全な食料の安定供給を実現するためには、日本の消費者が、自分と家族の健康のためにも、そうした「国産の安全な食料」を買い支えることが必要なのです。

美味しくて、しかも安全で、人間の健康を支える「安全な食料供給」を、安定して続けるには、生産者が頑張るだけでは中途半端なのです。完成形ではないのです。
消費者が参加して、生産者と消費者が協力することで、始めてこの仕組みは完成されるのです。

日本のメディアは、何かと言うと、生産サイド、供給サイドだけで、問題を解決させようとしがちです。
解決できるかのような表現をすることが多いです。
しかし、人の命の源である「安全な食料の安定供給」は、生産者の努力だけでは実現できません。
その食料を購入し、家庭で、美味しくて健康な食事をする「消費者」が参加することで、始めてしっかりと実現できることなのです。

常日頃から、このことを話し続けている私ですが、実際にお店のお客様と共に「優れた食材」と向き合い、調理についても話し合いながら、全国から優れた食材を調達している福島さんの話には、最初から終わりまで、うなずきっぱなしでした。

福島さんは勿論ですが、このような意義深いセミナーにお誘い頂いた一般社団法人フードトラストプロジェクトにも、ただただ感謝であります。

一人一人が、自分には何が出来るかを考え、行動することで、家庭の食事を変えることが出来るんだよな。
そう考えながら帰途に就きました。

プロが作るようなトロトロオムライスが自分でできたら・・・。


何年ぐらい前からでしょうか、時々テレビ番組で、プルンプルンの楕円形のオムレツをチキンライスの上に乗せてから真ん中に切り目を入れると、中の半熟部分がとろけ出すといったオムライスを見るようになりました。
私も、こんなオムライスが作りたくて、何度か挑戦しました。
しかし、どうがんばっても、なかなか理想的な半熟状態にはなりません。
内部が、フワフワトロトロのオムレツを作るのが、思いのほか難しい。
少し固まりすぎてしまって、切っても中身がとろっと出てこなかったり、とにかく卵をちょうど良い半熟状態にするのが難しい。

要は、完璧な「プレーンオムレツ」を作ることが出来るか出来ないかです。
これさえ出来れば、「楕円形のプレーンオムレツをライスの上に乗せてから真ん中に切れ目を入れて、中の半熟な部分が「トローッ!」ととろけ出すといったオムライス」が出来ます。
 
もう35年になるでしょうか、一時期美味しいオムレツに凝って、あちこちのレストランにオムレツを食べに行ったことを思い出します。
私がカウンターに座るや、お店の主から「今日もオムレツ?」って言われるほど通いました。
カウンターの向こうで、フライパンを優雅に操る店のオヤジを見ていて、「完璧なプレーンオムレツ」となると、プロでも結構難しいのかも、と生意気にも感じたものです。

ただ半熟というのではなく、オムレツ内部の卵がしっかりと泡立っていて、なおかつ半熟なのですね。 
こういうオムレツは当然の結果として「丸く、高く、ふっくらと盛り上がっていて、プルンプルン」しています。 
オムレツの内部がただ半熟というぐらいならば、一人前のちゃんとしたプロならば誰でも出来るかも知れませんが、泡の立ち方まで完璧となると、かなりのレベルのプロじゃないと無理なのかな、というのが当時私が持った印象です。
ま、ここまで行かなくても「納得できるレベルのプレーンオムレツ」を作れるようにならないと、「とろとろオムライス」は無理だということがよく分かりました。

話は変わりますが、こんな話し、ご存知ですか?
スペインに伝わっている昔話です。
スペインの王様が、何人ものお供をつれて田舎を散策している時、王様は急にお腹が減ったようで、「なにか食べたい、至急用意しろ」とお供に命じました。 
なんにもないスペインの田舎ですので、困り果てたお供は近くの家に飛び込み、家の人に「王様が急になにか食べたいと言っている。 なんでもいいから至急なにか料理してくれ」と頼み込んだのです。 
家の人は、すぐに卵を溶き、それをフライパンに流し込み、固まらないようにすばやくかき混ぜ、形を整えてお皿に盛り付けて、王様の前に出しました。
家の人の、あまりの手際の良さに感心した王様は「Quel homme leste !(ケロムレスト)」と叫んだのだそうです。 
「なんて素早い男だ」といった意味です。 
この「hommelest (オムレスト)」がオムレツの語源だという説があります。

オムレツを作る手順を説明します。
一人前の場合、卵を2個用意して下さい。 
① この卵をボールに割りほぐして、お塩と胡椒を加えて混ぜます。
② 次に、コンロの上で温めたフライパンにバターをいれ溶かします。
③ バターが溶けたら、フライパンに、すでに用意してある溶いた卵を一気に入れ、卵に空気がたっぷりと含まれるように大きく混ぜ、卵が半熟状になったら、卵がこれ以上固まらないようにするため、フライパンを火から離したり、近づけたり調節しながら、フライパンの取っての向い側の丸みを利用しながら形を整え、お皿に移します。

ポイントは、フライパンの温度が上がり過ぎないように、かといって下がり過ぎないように、フライパンを火から離したり近づけたりしながら、フライパンの温度をコントロールすること、そして卵にたっぷりと空気を含ませること、この二つです。

言葉で説明すると、たったこれだけのことなのですが、問題は「卵の状態を見ながら、卵に伝わる温度を敏感に感じながら微妙にフライパンの温度をコントロールし、しかも手早く作業ができる感性と訓練度」です。
失敗は成功の母、練習するしかありません。

最近は、自分で料理するのが面倒だとかいって、外食する人が沢山います。 
しかし本当は、自分と自分の家族の健康を考えたら、毎日の家庭における「正しい食生活」こそが基本です。

ですから私の家では、「プロなればこその技、味」これを楽しむために外食をすると決めています。 
自分の家で作れる料理を、わざわざお店に行って、お金まで払って食べるのは「ただの手抜き」と考えているからです。 
だからと言って、我が家の家庭料理のレベルを低く設定する気持ちなど、もとよりありません。 
つまり「家庭料理の役割」と「プロの料理の役割」は違うと考える方が、よりバランスの取れた、しかも変化もある「食生活」を送ることが出来るのではないでしょうか。

今回の「プロが作るようなトロトロオムライス」、そこにはレベルの高いオムレツを作れるかどうかという高いハードルがあります。 
普通に考えるなら、これは「プロの料理人の領域」に属する仕事だと思います。 
自分で作るのは、普通の卵焼きでくるまれた「オムライス」、これでよいのだと思います。
家族の健康を支える「我が家の味」、これが一番大切ですし、これが基本です。

一見、普通のオムライスなのだけれども、一箇所だけでいいから「我が家特製」の部分がある。 
結構このことが大切なのだと思います。 
家庭料理は毎日のことです。 
外食は「タマ」のことです。 
小さな特徴の裏にある大きな愛情、小さなサプライズに隠れている家族に対する強い思い、大人になって思い出す「お袋の味」の隠し味はこんなところにあるのではないでしょうか。
のは、実はこうしたことではないでしょうか。